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2024.07.16
Vol.4 蒜山の風物詩 -山焼き-
蒜山に春の訪れを告げる音
「パチパチ」という軽いものではなく「バチバチ」と迫力のある、その音。軒先に絶え間なく降り注ぐ雨のようでもあり、はたまた夏の夜に散る花火が轟くようでもあります。また、炎や煙が上へ上へと昇っていく姿は、まるで生き物のようでもありました。
蒜山における山焼き。
800年ほど前から行われてきたこの行事。この蒜山では集落ごとの総出の仕事として、4月に山焼きを行ってきました。山の表面を焼くことで、蒜山の雄大な草原風景が保たれています。そこには自然と人の共存と歴史が深く関係しています。
蒜山で草原が必要だった理由はふたつあります。
ひとつは、火山灰土である「黒ボク土」の存在です。大山(だいせん)が繰り返し噴火した際に、蒜山にその噴出物が大量に堆積しました。黒色がかった黒ボク土は、植物の残骸などの有機物と混ざり合い、長期間にわたって分解されることで生成され、名産となっているキャベツや大根などの野菜作りに適しています。
一方で、稲作には向いていない性質です。明治時代になるまで、年貢を主に米で納めていたことから、食べる量以上の米を作るため、6月~11月頃まで毎日朝晩、草原に出かけて草を刈り、田畑の土壌改良材や肥料、農耕用の牛馬の餌や寝床として利用してきました。
もうひとつは、茅葺(かやぶき)屋根や雪囲い用に「茅(=ススキ)」を収穫するためです。草丈の高いススキが必要であったため、山焼き後の茅山(かいやま)では茅が生長を終え枯れ上がり、収穫できるようになる11月下旬頃まで草刈りは一切行わず、集落ごとに解禁日の号令が出たら収穫し、生活必需品として大きな役割を担っていました。
そうして長い間、人々は生活のため、良い茅を育てるために山焼きをしていましたが、高度経済成長とともに茅葺屋根は減り、化学肥料ができ、生活との関わりが薄くなっていきました。
蒜山における山焼き。
800年ほど前から行われてきたこの行事。この蒜山では集落ごとの総出の仕事として、4月に山焼きを行ってきました。山の表面を焼くことで、蒜山の雄大な草原風景が保たれています。そこには自然と人の共存と歴史が深く関係しています。
蒜山で草原が必要だった理由はふたつあります。
ひとつは、火山灰土である「黒ボク土」の存在です。大山(だいせん)が繰り返し噴火した際に、蒜山にその噴出物が大量に堆積しました。黒色がかった黒ボク土は、植物の残骸などの有機物と混ざり合い、長期間にわたって分解されることで生成され、名産となっているキャベツや大根などの野菜作りに適しています。
一方で、稲作には向いていない性質です。明治時代になるまで、年貢を主に米で納めていたことから、食べる量以上の米を作るため、6月~11月頃まで毎日朝晩、草原に出かけて草を刈り、田畑の土壌改良材や肥料、農耕用の牛馬の餌や寝床として利用してきました。
もうひとつは、茅葺(かやぶき)屋根や雪囲い用に「茅(=ススキ)」を収穫するためです。草丈の高いススキが必要であったため、山焼き後の茅山(かいやま)では茅が生長を終え枯れ上がり、収穫できるようになる11月下旬頃まで草刈りは一切行わず、集落ごとに解禁日の号令が出たら収穫し、生活必需品として大きな役割を担っていました。
そうして長い間、人々は生活のため、良い茅を育てるために山焼きをしていましたが、高度経済成長とともに茅葺屋根は減り、化学肥料ができ、生活との関わりが薄くなっていきました。
ここにしかいない動植物の存在
高度経済成長(昭和30年代頃)まで、蒜山高原には、旧川上村のエリアを中心に山焼きによって維持された広大な草原が広がっていましたが、草資源の必要性が低下したことにより、ほとんどの草原が牧草地や植林地に代わってしまいました。現在は5つ程度の集落により山焼きが実施されており、草原が点在している状況です。
山焼きが現代まで続けられてきたのは、長い間この営みに適応して生きてきた、ここにしかいない動植物の存在と、草原の景観が “蒜山らしさ” となり、地域資源になったからです。
今回の山焼きを見せてもらったのは、鳩ヶ原(はとがはら)という地域でした。
昔に比べて草原面積は減少してはいますが、2022年に設立された蒜山自然再生協議会、地元やボランティアの方々を中心に毎年山焼きが行われ、夏には草刈り、秋には茅刈りをして蒜山の豊かな景観を守っています。
また、茅活用の新たな可能性を探っており、茅が有益なものとして活用されれば、山焼き活動の糧となり、農閑期の副業にもつながります。
草原の生態系としての価値、地域に住む人にとっての観光資源としての価値。
蒜山だからこそ続けてこられた営みですが、動植物にとって草原がただ増えればいいというわけではありません。草原にしか生息していない動植物もいれば、森にしか生息していない動植物もいます。大事なのは、長年続けられてきたことによって保たれている生態系を守っていくことです。
それが、自然にも人にとっても良い共生のかたちではないでしょうか。
山焼きが現代まで続けられてきたのは、長い間この営みに適応して生きてきた、ここにしかいない動植物の存在と、草原の景観が “蒜山らしさ” となり、地域資源になったからです。
今回の山焼きを見せてもらったのは、鳩ヶ原(はとがはら)という地域でした。
昔に比べて草原面積は減少してはいますが、2022年に設立された蒜山自然再生協議会、地元やボランティアの方々を中心に毎年山焼きが行われ、夏には草刈り、秋には茅刈りをして蒜山の豊かな景観を守っています。
また、茅活用の新たな可能性を探っており、茅が有益なものとして活用されれば、山焼き活動の糧となり、農閑期の副業にもつながります。
草原の生態系としての価値、地域に住む人にとっての観光資源としての価値。
蒜山だからこそ続けてこられた営みですが、動植物にとって草原がただ増えればいいというわけではありません。草原にしか生息していない動植物もいれば、森にしか生息していない動植物もいます。大事なのは、長年続けられてきたことによって保たれている生態系を守っていくことです。
それが、自然にも人にとっても良い共生のかたちではないでしょうか。
「コト」や「モノ」からつながる自然共生への道
蒜山の多様な動植物を育む自然環境やそれらを繋ぐ広大な景観は、自然と結びついた人々の暮らしの中で創り出されてきました。GREENableは、人が自然に関わる機会を増やす「コト」や「モノ」を通じて自然との距離を近づけ、自然の利用と保全が適切になる関係を構築したいと考えています。
そうして生まれたのが「SIRUHA × 蒜山自然再生協議会 × GREENable」のプロダクトです。
岡山県笠岡市で、書くコトと出掛けるコトが快適になる道具作りと、やりたいことを見つけて実現していくための役に立つ情報発信に取り組んでいるブランド。良いモノと良い情報があれば、人はもっとやりたい事に集中できる。
SIRUHAの代表・藤本 進司(ふじもと しんじ)さんは「ものづくりのあり方自体も考えながら製作をしています。自分自身で手作りしてみながら、人の暮らし自体も見据えながら、ものづくりをしていきたい。自然と人がつながっていることで、ものづくりのヒントも得られる。蒜山で言えば、がま細工のような民藝として捉えることのできるアイテムも生まれていると思うんです」と話します。
そんなSIRUHAとの出会いは、いくつもの縁が重なって生まれたものでした。
そして、実際に蒜山に足を運んでいただきました。大切にしたのは、商品を手にしてもらうことで、山焼きなどの蒜山の自然を考えてもらうキッカケにしたいという想い。
蒜山自然再生協議会の千布 拓生(ちぶ たくお)さんの話を聞き「蒜山の景色は、自然と人間が数100年以上の関わりの中でできた風景で、そのひとつひとつに意味があり、人の暮らしや必要に応じてできた自然で、人間と自然の関わりのヒントになるんじゃないかとも思いました」と、藤本さんは語ります。
商品の売上の一部が、蒜山自然再生協議会へ寄付されることも、その流れで実現に至りました。
今回、採用されたデザインモチーフは、自然と人との共生が続いてきた蒜山だからこそ息づく “生物” や、蒜山の土地だからこその美味しい “食物” 。
自然と人の共生のなかで続いてきた伝統行事である山焼きを行うことで、草原に依存度が高い動植物の住処が保たれてきました。
これからも私たちは「コト」や「モノ」を通じて、その大切さを伝えていきます。
【蒜山モチーフゆる絵モデルのミニ財布(左から)】
・フサヒゲルリカミキリ
2020年現在、確実に生息が確認されているのは岡山県、蒜山のみ。
触覚にはよく目立つ「房ヒゲ」を生やし、食草は草原性植物のユウスゲ。
・オオサンショウウオ
標高が高く、綺麗な水がある蒜山だからこそ生息しており、国の特別天然記念物に指定されています。
・ひるぜん大根
寒暖差によって甘みが増す人気の「ひるぜん大根」
大山の火山灰を含んだ黒ボク土によって美味しく育ちます。
この夏からは、蒜山の寒暖差が生み出した糖度の高さが特徴の「とうもろこし」のデザインも新たにラインナップに加わりました。どのデザインも愛らしいので、手にとっていただきたいです。
そうして生まれたのが「SIRUHA × 蒜山自然再生協議会 × GREENable」のプロダクトです。
岡山県笠岡市で、書くコトと出掛けるコトが快適になる道具作りと、やりたいことを見つけて実現していくための役に立つ情報発信に取り組んでいるブランド。良いモノと良い情報があれば、人はもっとやりたい事に集中できる。
SIRUHAの代表・藤本 進司(ふじもと しんじ)さんは「ものづくりのあり方自体も考えながら製作をしています。自分自身で手作りしてみながら、人の暮らし自体も見据えながら、ものづくりをしていきたい。自然と人がつながっていることで、ものづくりのヒントも得られる。蒜山で言えば、がま細工のような民藝として捉えることのできるアイテムも生まれていると思うんです」と話します。
そんなSIRUHAとの出会いは、いくつもの縁が重なって生まれたものでした。
そして、実際に蒜山に足を運んでいただきました。大切にしたのは、商品を手にしてもらうことで、山焼きなどの蒜山の自然を考えてもらうキッカケにしたいという想い。
蒜山自然再生協議会の千布 拓生(ちぶ たくお)さんの話を聞き「蒜山の景色は、自然と人間が数100年以上の関わりの中でできた風景で、そのひとつひとつに意味があり、人の暮らしや必要に応じてできた自然で、人間と自然の関わりのヒントになるんじゃないかとも思いました」と、藤本さんは語ります。
商品の売上の一部が、蒜山自然再生協議会へ寄付されることも、その流れで実現に至りました。
今回、採用されたデザインモチーフは、自然と人との共生が続いてきた蒜山だからこそ息づく “生物” や、蒜山の土地だからこその美味しい “食物” 。
自然と人の共生のなかで続いてきた伝統行事である山焼きを行うことで、草原に依存度が高い動植物の住処が保たれてきました。
これからも私たちは「コト」や「モノ」を通じて、その大切さを伝えていきます。
【蒜山モチーフゆる絵モデルのミニ財布(左から)】
・フサヒゲルリカミキリ
2020年現在、確実に生息が確認されているのは岡山県、蒜山のみ。
触覚にはよく目立つ「房ヒゲ」を生やし、食草は草原性植物のユウスゲ。
・オオサンショウウオ
標高が高く、綺麗な水がある蒜山だからこそ生息しており、国の特別天然記念物に指定されています。
・ひるぜん大根
寒暖差によって甘みが増す人気の「ひるぜん大根」
大山の火山灰を含んだ黒ボク土によって美味しく育ちます。
この夏からは、蒜山の寒暖差が生み出した糖度の高さが特徴の「とうもろこし」のデザインも新たにラインナップに加わりました。どのデザインも愛らしいので、手にとっていただきたいです。