GREENable HIRUZEN

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2021.08.06

Vol.2 ふたつの意匠に、自然とのかかわりを考える

風が運んでくる夏の香り

みなさんは、季節を何で感じますか?

私は香りで季節を感じています。ここ、蒜山で暮らしていると、自然の香りに敏感になった気がします。そして、その香りを届けてくれるのは風です。

まだ涼しい早朝の、木々のすがすがしい香り。太陽が照りつける草原で南風が運んでくる草いきれ。夕立のあとの立ち上る、懐かしい土のにおい。

そんな香りをかぐと、記憶の扉が一瞬で開き、夏の思い出がよみがえり、夏だなあと感じます。

里帰りしてきた「風の葉」

7月15日、「GREENable HIRUZEN」がオープンしました。その象徴ともいえるのが、CLTパビリオン「風の葉」。真庭市産のCLT(直交集成板)を使った木製パネルを組み合わせたデザインは、蒜山の葉と森をイメージしています。確かに、ひし形のパネルは葉っぱのようで、パビリオンを遠くから眺めると、ちいさな森のようです。

この「CLTパビリオン」を含む当施設は、2019年11月から約1年間、東京・晴海で展示施設として使用された後、この夏、「里帰り」してきました。真庭の木材の魅力と可能性を街の人たちに伝えるという役目を果たし、ふるさとに戻ってきた「CLTパビリオン」は、蒜山高原の雄大な自然に溶けこみ、ほっとして、寛いでいるように見えました。

「風の葉」の中に入ると、夏の太陽はさえぎられ、木漏れ日のような優しい日差しに変わります。芝生の上に寝っ転がって目を閉じてみると、さわやかな風が吹き抜け、涼を感じます。そして、風が運んでくる緑の香り。木の葉のさや音さえ、聞こえてきそう。そう、蒜山の夏はこんな感じ。ここは、自然とつながることができる場所なのだ。

日本が誇るサステナブル、茅葺きの妙

「GREENable HIRUZEN」の一番奥に建つのが新たにできた、「サイクリングセンター」です。軒から天井にかけて茅を使用していて、まるで茅葺きの屋根をひっくり返したかのよう。葺き替えの大変さがネックとなって茅葺きがすたれてきたことをふまえ、葺き替えをせずに茅の状態維持を可能にするこの斬新なデザインを考案したそうです。

実は「茅」という植物はありません。茅とは屋根を葺く草の総称のことで、実際にはススキやヨシなどが用いられます。このサイクリングセンターは蒜山の草原に自生するススキが使われています。

蒜山地域では、800年ほど前から山焼きが行われてきました。草原に火を入れることで、雑木の進入を防ぎ、ススキの新芽の成長を促し、多様な動植物が生息する生態系を保っています。しかし、茅葺きの建物が減り、飼料などとしての需要も減っていくなかで、各地で草原が荒廃し、減ってきているそうです。


わたしが愛する「草原風景」は、ただ美しいだけでなく、人と自然の共生を象徴する景色だと思います。茅を活かしたサイクリングセンターは建築の持続可能性を示すとともに、草原や里山の持続可能性をも提示してくれているように感じます。

「風の葉」や「サイクリングセンター」をはじめ、「GREENable HIRUZEN」の建物はすべて、新国立競技場も手がけた、世界的な建築家・隈研吾さんの設計です。
自然との一体化、自然との共生をテーマに、「どうやったら自然の中に人が戻ることができるか」を考えて設計したと、おっしゃっていました。

まずはここ「GREENable HIRUZEN」に来て、「風の葉」や「サイクリングセンター」を体感してください。そして、ほんものの蒜山の自然のなかに身を置いてみてください。

きっと、自然とつながる出発点になるはずです。

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